ずいけい
まごころに生きる  


NHKの「プロフェショナル・仕事の流儀」でも紹介された、青森県弘前市岩木町のリンゴ農家木村秋則(きむらあきのり)さんは、それまで不可能といわれた、無肥料・無農薬でのリンゴ栽培に成功された方です。
この放送で、木村さんのリンゴは「奇跡のリンゴ」として、全国に紹介されました。木村さんの提唱する農作物の自然栽培法は、今や日本国内にとどまらず世界各国で注目を集めるようになりました。現在木村さんは、農作物の自然栽培法を、日本国内はもとより、海外にまで指導に出かけられます。

さて、木村さんが、無農薬の自然栽培をはじめられたきっかけは、奥様が農薬に対して過敏症であったからです。農薬散布により、顔や手が腫れ上がり、時には具合が悪くなり寝込んでしまうこともあったといいます。そこで、奥様のために農薬を使わない安全なリンゴ栽培に挑戦されます。
ところが、リンゴの無農薬栽培は非常にむずかしく、病気や害虫により、リンゴの葉がすべて枯れ落ちてしまいます。木村さんは、リンゴの葉を守ろうと、ありとあらゆる工夫を重ねましたが、失敗と苦労の連続でした。
挑戦をはじめて八年間は、まったく実がならず、800本あったリンゴの木は、400本枯れて半分になってしまったといいます。もちろんその間、収入がまったく無く、家族は困窮をきわめました。周囲からも変人扱いされ、白い目で見られ村八分状態になったといいます。しまいには、「かまど消し」とまで呼ばれるようになりました。
かまど消しとは、東北の方言で、かまどの火を消すほどの破産者、大ばか者という意味です。
そのような中でも、木村さんは、決して自然栽培をあきらめませんでした。ひたすらリンゴの木と向き合いました。そして、日夜リンゴと語り合い、リンゴの気持ちになったとき、ついにリンゴの木は花を咲かせ、実をつけました。それは、木村さんが無農薬の自然栽培をはじめて、じつに9年目のことでした。

木村さんはいわれます。
「私がリンゴの無農薬栽培に挑戦して何年も失敗し続けたのは、今にして思えば、自分の目に見えるものだけに囚われていたからだということがよくわかります。それが間違いの元でした。
農薬散布をやめると、まずリンゴの葉が病気や害虫の餌食になります。なんとか葉を病気や害虫から守ろうとして、気の遠くなるような苦労をしました。数え切れないほど工夫も施したつもりです。それでも効果はほとんど挙がりませんでした。
それは私が、自分の目に見えるもの、つまり地上にある葉や枝ばかりを見ていたからです。目に見えない地下のことを考えていなかった。リンゴの木を支え、水や養分を吸い上げる根っこのことも、その根っこの周りに生きている菌類や微生物のことも、まったく考えていなかった。
山の樹木は農薬の助けなんか借りなくても、健康にたくましく生きています。病気や害虫に負けることもありません。それは根っこが健康そのものだからです。リンゴの木があれほど病気や害虫にやられたのは、根の健康が損なわれていたからです。もちろんリンゴの葉を守るのは大切だけれど、そのためにも目には見えない根っこのことを考えなければいけなかったのです。
これはリンゴ栽培だけでなく、他のあらゆる分野にも共通することだと思います。本当に大切なことは目に見えないのです。その目にみえないものを、見る努力をすること。見えないものに、自分の想像力を働かせること。科学が進歩したおかげで、逆に我々現代人はそのことを忘れているような気がします。人間は何でも知っていると思い込んでしまったから、いろんなことが上手くいかなくなったんじゃないでしょうか。人間はもっと謙虚にならなきゃいけなかったんじゃないかと、自分への反省を含めて、つくづく思うのです。」

木村さんがいわれるように、私たちは、何かを見失っているのかもしれません。現代社会は、あまりにも物が豊かになり、目に見えるものだけを、耳で聞こえるものだけを頼りにしているような気がします。本当は、目に見えないものこそ大切にしなくてはならないのであり、耳に聞こえない声を聞いていかなければならないのではないでしょうか。
▲木村秋則さん
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