ずいけい
まごころに生きる  


昨年、旭川市で()()(はる)()先生の「イエスとブッダそれからみすゞ」という、ご講演を拝聴いたしました。佐治先生は、宇宙物理学博士で、1977年に打ち上げられた、NASAの惑星探査機ボイジャーに地球からのメッセージとして、バッハのプレリュードを搭載して、E.T.(地球外生命体)との交信に音楽を使うことを提案したことでも知られます。
ボイジャーが打ち上げられてから、今年で40年になり、今も宇宙の情報を地球に送りつづけています。現在ボイジャーは、太陽圏を出て、地球から207億㎞の宇宙を一人旅しているそうです。207億㎞という距離は、光の速さで18時間かかります。ちなみに、光の速さで太陽までは8分、月までは1秒の距離だそうです。
さて、金子みすゞという人は、明治36年に山口県に生まれた童謡詩人です。大正から昭和にかけて、日本の童謡の隆盛期に彗星のように現れ、西条八十に「若い童謡詩人中の巨星」とまで賞賛されながら、昭和5年にわずか26歳でこの世を去りました。
没後、512編の遺稿が見つかり、1982年に「金子みすゞ全集」として3巻の詩集が出版されました。

佐治先生は、金子みすゞさんの詩は、とても仏教的であるといいます。仏教の教えは、すべてのものがご縁によりつながっているという教えです。世の中は、私だけで存在しているのではなく、色々なものとつながり、関わり合って存在するという(えん)()の教えです。ですから、すべてのものに思いをめぐらせる、思いやりのこころが大切になるのです。
金子みすゞさんの代表作は、「大漁」「こだまでしょうか」「私と小鳥と鈴と」など多数ありますが、どの作品も、自然とともに生き、小さな命を(いつく)しみ、命なきものへの優しさなど、仏教が大切にする「()(あい)」の思いが根底に流れます。

(たい)(りよう)

朝やけ小やけだ
大漁だ
大ばいわしの
大漁だ

はまは祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
いわしのとむらい
するだろう。


この詩は、弱いもの、しいたげられたもの、貧しいものに対して、みすゞさんのいたわりや、温かく優しい眼差しが伝わる詩です。表に出るものとその裏側にあるものとの対比をとおして、仏教でいう、差別の世界から抜けだし、仏さまの平等の世界の大切なことを表しているともいえるのではないでしょうか。
  
こだまでしょうか

「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。

「ばか」っていうと
「ばか」っていう。

「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。

そうして、あとで
さみしくなって

「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
 
こだまでしょうか、
いいえ、だれでも。


こちらから投げかけたことばに反応するのは、こだまだけではなく、万人であり、その万人のこころであるということです。相手に寄り添うことの大切さを伝えているともいえるでしょう。

私と小鳥と鈴と

私が両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥は私のように、
地面をはやく走れない。 

私がからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな歌は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。


鈴は鈴として、小鳥は小鳥として、私は私として、それぞれに価値があり、光り輝く大切な存在です。一つの基準ですべての価値を決めてしまうのではなく、あなたはあなたで、私は私で、それぞれに絶対の価値があり、ひとつの特別な存在(The Only One(ザ オンリー ワン))であるということです。
佐治先生は、この詩の表題では「私と、小鳥と、鈴と」という順番ですが、詩の中では「鈴と、小鳥と、それか私」となっていることが、とても仏教的で大切であるといわれます。それは、すべての存在がそのままですばらしいと気づいた時に、「私」中心だった目差しが、「あなた」(小鳥と鈴)に変わっていくのです。つまり、すべてのものに私もつながっているという謙虚なこころに目覚めることが大切であるといわれます。

私たちは、つい人と自分を比較して、優位にありたいと思ってしまいます。でも、この狭い世界で、優位に立つことにどれほどの価値があるのでしょうか。
仏さまの平等(みんないい)のこころを大切にして、穏やかな平和な一年を過ごしましょう。



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