ずいけい
まごころに生きる  


昭和26年(1951)、3月30日に千葉市内の泥炭層から、約2000年前(弥生時代)の古代ハスの実が発見されました。
発見者は、岡山市出身の植物学者、大賀一郎博士です。博士は、3粒発見された実のうち1粒の発芽に成功されます。そして、翌年の7月18日に見事にピンク色の大輪の花を咲かせることに成功いたしました。この古代ハスは、博士の姓をとって「大賀(おおが)ハス」と命名されました。
2000年の時を越えて見事に開花した大賀ハスは、その後博士の故郷、岡山県の後楽園をはじめ、日本各地は元より世界各国へ根分けされました。
発祥の地となった千葉市では、大賀ハスが市の花に指定され、市のシンボルキャラクターにもなっています。

ハスは、東南アジアから東アジアにかけて自生していて、仏教とのつながりも深く、多くの仏典や仏教絵画に登場します。泥の中から美しい花を咲かせる姿は、極楽浄土(ごくらくじようど)の花としても尊ばれてきました。また、ハスの花を(かたど)った蓮華座(れんげざ)は、仏さまの坐る聖なる座席とされています。
極楽浄土の花としてのハスは、愛するもの同士が死後に、浄土で同じハスの上に生まれ、そこに永遠の命をあずけたいという願いから「一蓮托生(いちれんたくしよう)」ということばも生まれたといわれています。それが、現在では、善悪いずれにつけても運命を共にすることの意味に使われるようになりました。
また「レンコン」は、ハスの地下茎(ちかけい)が肥大したものですが、葉や(くき)、ハスの実と共に昔から薬用として珍重されてきました。今では食用として茨城県をはじめ、各地で広く栽培されるようになりました。このように昔から、日本人は、ハスを生活や文化の中に取り入れてきました。
そしてまた、平安から鎌倉時代に作られたといわれる、説話文学の最大最高の説話集である「今昔物語集(こんじやくものがたりしゆう)」にも、ハスのお話しが多く登場します。

-西方に向くはす蓮の花-
今は昔。加賀の国(石川県)に、信心深い女が一人住んでいた。その家の池にハスが生じた。女はこのハスの花を諸々の寺に参って仏に供養した。
年は経て、女は年老い病に()せるようになった。このとき、池のハスが盛んに咲いたので、いよいよ極楽に往生するときが来たと思い、病になった事を喜んでいうのに「私は、年来の願いの如く、このハス花がさかんなるときに病気になった。これをもって私は必ず極楽に往生する機縁(きえん)ができた」と。そして、直ちに身内のものを集めて、振る舞いをして年来の親切を謝し、「私は、今日限りで人界を去ることになりました」といった。身内の者は皆、驚き悲しんだが、また同時に崇高(すうこう)なものを感じた。
その夜、池のハスの花が皆ことごとく西に(なび)いた(西方浄土(さいほうじようど)=浄土は西の方角にある)。これを見た人々は、この女が往生した証拠だとして、皆涙を流して合掌したという。

(今昔物語集より)

近年、当山の境内にてもハスを栽培しています。お盆にはちょうど開花することと思います。ハスは、仏さまともご縁の深い清楚なお花です。早朝、つぼみが開くときには「ポンッ」と音がするともいわれています。お盆参りの折に、どうぞご観賞ください。 



最新記事へ



●令和6年1月号 生命とは動的平衡
●令和5年10月号 色即是空空即是色
●令和5年8月号 森の木は会話する
●令和5年5月号 教育勅語
●令和5年3月号 龍村仁監督と佐藤初女さん
●令和5年1月号 中宮寺 如意輪観音
●令和4年10月号 人は死なない
●令和4年8月号 バッチ博士のフラワーレメディ
●令和4年5月号 縄文文化-縄文土器-
●令和4年3月号 イマジン
●令和4年1月号 日本のなりたち
●令和3年10月号 ありがとう
●令和3年8月号 「而今」ー今ここー
●令和3年5月号 シュリハンドクとレレレのおじさん
●令和3年3月号 コロナウイルスとこれからの日本
●令和3年1月号 三密とコロナ
●令和2年10月号 日月神示が告げるコロナとミロクの世界
●令和2年8月号 祈祷-命の危機の時代に-
●令和2年5月号 色即是空-色はすなわち是れ空なり-
●令和2年3月号 お彼岸-内海聡先生講演会-
●令和2年1月号 お水の時代
●令和元年10月号 生まれる前のおはなし
●令和元年8月号 祈りと量子力学
●令和元年5月号 一休禅師とシャーリー・マクレーン
●平成31年3月号 『浴司』よくす
●平成31年1月号 夢と意識
●平成30年10月号 『而今』にこん
●平成30年8月号 懐奘さまのまごころ 孝順心
●平成30年5月号 唯仏与仏
●平成30年3月号 彗星探索家 木内鶴彦さん
●平成30年1月号 金子みすゞの世界
●平成29年10月号 お地蔵さま
●平成29年8月号 お盆
●平成29年5月号 諸法実相-ただ仏と仏とのみ-
●平成29年3月号 即心是仏
●平成29年1月号 はじまりはひとつ
●平成28年10月号 ホセ・ムヒカの生き方と言葉
●平成28年8月号 1/4の奇跡
●平成28年6月号 いのちをむすぶ ー佐藤初女さん
●平成28年3月号 般若心経
●平成28年1月号 生きがい
●平成27年10月号 死後の世界(その二)
●平成27年8月号 死後の世界
●平成27年5月号 ダライ・ラマ十四世法王
●平成27年3月号 正倉院ーシルクロードの終着駅ー
●平成27年1月号 三帰礼文ー三宝を敬うお唱えー
●平成26年10月号 「般若心経」色即是空・空即是色
●平成26年8月号  ハス
●平成26年5月号 観音さま
●平成26年3月号 無情説法
●平成26年1月号 石田徹也
●平成25年10月号 食 じき
●平成25年8月号 GOMA
●平成25年5月号 宮沢賢治ー菩薩の道を行くー
●平成25年3月号 東日本大震災 三回忌追悼
●平成25年1月号 新年あけましておめでとうございます
●平成24年10月号 宇宙の始まり
●平成24年8月号 ふくしま
●平成24年5月号 花まつり
●平成24年3月号 画餅 -絵に描いた餅-
●平成24年1月号 いま・ここを大切に生きる
●平成23年10月号 大自然から学ぶ
●平成23年8月号 暑中お見舞い申し上げます
●平成23年5月号 花まつりーお釈迦さまの誕生日
●平成23年3月号 「奇跡のリンゴ」
●平成23年1月号 「すべてはこころ」
●平成22年8月号 自発的治癒力
●平成22年8月号 地蔵盆
●平成22年8月号 奇跡のリンゴ
●平成22年5月号 お水取り
●平成22年3月号 仏さまに救われて
●平成22年2月号 号外 真如の表紙
●平成22年1月号 新年のごあいさつ
●平成21年10月号 浄国寺御開山
●平成21年5月号 花まつり
●平成21年3月号 お彼岸
●平成21年3月号 チェンジ-変革
●平成20年10月号 あいさつ
●平成20年8月号 天来の呼び声
●平成19年8月号 釈迦八相
●平成19年5月号 花まつりーお釈迦さまの誕生日
●平成17年10月号 イサム・ノグチとモエレ沼公園

Copyright (C) 2009 joukoku-ji.jp. All Rights Reserved.