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奈良東大寺の後方、300メートルのところに、正倉院という一画があります。奈良時代には、大切なものを納めておく倉を正倉(しようそう)といい、正倉のある一画を塀で囲ったものを「正倉院」と呼びました。当時、南都七大寺にはそれぞれ正倉院が存在しましたが、時代が下るにつれ消失し、東大寺正倉院の正倉一棟だけが残り、正倉院は東大寺の正倉院宝庫をさす固有名詞となりました。現在、この東大寺の木造校倉造(あぜくらづくり)りの倉庫を、正倉院正倉といい、世界遺産にも登録されています。
正倉の大きさは、南北に長い一棟の建物で、幅33メートル、奥行き11メートル、高さ14メートル、床下2.7メートルの高床式(たかゆかしき)の建物です。校倉造(あぜくらづくり)といわれるように、大きな三画材を交互に組み合わせて作られています。当初、この宝庫には世界的にもすばらしい数々の宝物が納められていましたが、現在は、火災など災害に備えて、鉄筋コンクリート造りの東西両宝庫を建築し、ここに宝物が納められています。
東大寺正倉院の始まりは、天平勝宝8年(756)、聖武天皇(しようむてんのう)崩御(ほうぎよ)され、その四十九日にあたる6月21日、聖武天皇の皇后であった光明皇太后(こうみようこうたいごう)が、聖武天皇ゆかりの遺品を東大寺の盧舎那仏(るしやなぶつ)(大仏さま)に献納(けんのう)さ、ご冥福を祈られたことによります。遺品の数は600件以上で、目録の『国家珍宝帳(こつかちんぽうちよう)』とともに納められました。この時、病気で苦しむ者の救済に用いるよう、薬類60種も献納されています。その後も光明皇太后により、4回にわたりさまざまな品が献納され、この5回分の献納目録5通が現在に伝わっており『東大寺献物帳(けんもつちよう)』と総称されています。これらの献納品は正倉に納められ、天皇の署名入りの紙を鍵に巻き付けて施錠する「勅封(ちよくふう)」によって厳重に管理されてきました。
また、光明皇太后の献納品意外にも、東大寺の大仏開眼(だいぶつかいげん)などの法要儀式などに使われた仏具・法衣、あるいは東大寺に献納された美術品、他に帳簿などの文書類、作業用の衣服、実用品など、奈良時代にシルクロードにより古代中国をはじめ遠く西アジアさらにヨーロッパ大陸から伝わった貴重な宝物など約9000件が納められています。正倉院は、正にシルクロードの終着駅なのです。
▲東大寺大仏殿 ▲正倉院正倉

◆正倉院展
昭和21年(1946)奈良国立博物館で第1回が開催されました。その後、毎年開かれており、期間中通常非公開の宝物が70点あまり展示公開されています。正倉院の宝物は、約9000点に上るので、代表的な宝物を見るだけでも数十年の見学が必要になります。毎年10月下旬から11月中旬かけて開催され、20万人の人が見学されます。

◆正倉院の楽器
正倉院には、23種100点余りの楽器が収蔵されています。その中には、聖武天皇ご遺愛のものや、東大寺大仏開眼などでの法要儀式に使用されたものなどがあります。これらの楽器は、古代楽器のコレクションとしては、世界的にみても他に類例のない、貴重な音楽史上の遺産となっています。現在ではすでに消滅したものもあり、正倉院のものが世界唯一の場合も多くあります。また、その装飾の見事さも注目されます。当時の珍財を贅沢に使い、工芸技術の粋を集めて豪華な装飾を施したものが多く保存されています。
毎年秋に開催される正倉院展においても、楽器はとくに人気があり、多くの観覧者の関心を集めています。

螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんごげんのびわ)
世界唯一とされる古代の五弦琵琶(現在の琵琶は四弦)。『国家珍宝帳(こつかちんぽうちよう)』に記載された由緒のある名器で、精巧な螺鈿細工(らでんさいく)が施され美術工芸品としての価値も高い。古代インドからシルクロードを経て、中国から日本へと渡来した。
▲奈良時代の衣装 ▲五弦琵琶 表 ▲五弦琵琶 裏

甘竹簫(かんちくしよう)
西洋のパンパイプと同類の楽器。日本へは奈良時代までに中国より伝来した。この(しよう)は、(しん)の時代(紀元前221~207年)にはすでに存在していたとの記録があり、古く歴史のある楽器。
甘竹簫(かんちくしょう)






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