ずいけい
まごころに生きる  


4月8日。全国の寺院では、お釈迦さまのお誕生をお祝いする花まつりの法会、「降誕会(ごうたんえ)」が修行されます。当山では、花の咲く季節となる5月15日に、毎年「花まつり」が修行されます。

「はなさかじいさん」という日本昔話を憶えておられますか。
おばあさんが川で洗濯をしていると子犬が流されてきます。おじいさんとおばあさんは、『しろ』と名付け、子どものようにかわいがり育てました。ある日、裏の畑で「ここほれワンワン」しろがほえます。すると、大判小判がザクザク出てきます。
それを見ていた隣の欲張りじいさん。しろを借りていきますが、出てきたのはガラクタばかり。怒ったじいさんは、しろをたたきます。かわいそうに、しろは死んでしまいました。しろの埋められた跡には大きな木が育ち、やさしいおじいさんは、その木で臼をつくり、しろを思い出しながらお餅をつきました。すると今度は、臼から大判小判があふれてきます。
これを知った隣のじいさんも、臼を借りて餅をつきました。けれども、出てきたのはゴミやガラクタばかり。怒った欲張りじいさんは、臼を割ると燃やしてしまいます。やさしいおじいさんは、涙をこぼしながら灰をざるに集めます。「しろや。天国でしあわせになるんだよ。」
おじいさんは、木に登って灰を一つかみまきました。すると、どうしたことでしょう。枯れ木に花が咲きました。みるみるあたりはきれいな花でいっぱいにそまりました。
 
私は子どもの頃、このお話を聞いて、灰をまくとどうして枯れ木に花が咲くのか不思議に思ったことを思い出します。
ところで、昔から日本人は、灰を大切にし、日頃の生活に利用してきました。灰は今でも、自然染色の媒染(ばいせん)、陶芸の釉薬(ゆうやく)、畑の肥料、傷口の消毒、お酒の醸造、漂白など様々に用いられています。ここ北国でも、いまちょうど春の山菜の季節を迎えていますが、竹の子やわらびなどの山菜のあく抜きにはこの灰が欠かせません。
ともすると私たちは、「灰になるとすべてがおしまい」「灰になると何にもなくなる」と思いこんでしまいがちですが、燃えつきて形が消えても、残った灰によって、またそこから色々なものが形を変え再生するということも知らなければなりません。つまりそれは、すべての世界は一つのところやものにとどまることがなく常に循環していくということでしょう。
命ももちろんそうです。ですからしろの命は、大きな木に宿り臼となり、その臼が灰になっても、また形を変えてきれいな満開のお花として生まれ変わっていったのです。
「はなさかじいさん」は、命は形を変え受け継がれていくことを、すべての世界は循環していくことを伝えていたのです。





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