ずいけい
まごころに生きる  


昨年の九月十三日に、私の母が九十四歳で亡くなりました。入院はしていませんでしたので、永年住み慣れたお寺で最期を迎えることができました。家族に看取られ、とても穏やかに静かに旅立ちました。見送った家族も、本当に長い間ご苦労様でした、ありがとうございました、という気持ちで見送ることができました。
母の晩年は、車いす生活となり、身体も自由に動かなくなり、身体的にも精神的にも辛いことがあったことと思います。私にとっても別れは悲しく寂しいことではありましたが、これで痛みも不自由さもない安らぎの世界へ戻ることができましたねという、なぜかほっとした安堵の気持ちになったことも思い出されます。

『人は死なない』という本を出された、東京大学名誉教授で医師の()(はぎ)(なお)()先生は、「私は『あの世』の存在を認知しています。私たちはそこから意図(魂の計画)を持ってやって来て、肉体の限界(肉体死)を迎えたら、故郷、つまりその世界に帰るのです。
これを何度も繰り返すことを、一般に(りん)()(てん)(しょう)と呼んでいます。
肉体は死にますが、魂は死なないのです。魂というのは、私たちの根源的なエネルギー体であり、魂こそ、あの世とこの世を行ったり来たりする本体です。肉体は三次元のこの世で活動するための乗り物です。
それが理解できれば、そもそも死を心配する必要がないことを、ほんの少しでも実感できるのではないでしょうか。
突然死ぬ人、病気で死ぬ人、死因はさまざまですが結局のところその人のもって生まれた寿命なのだと思います。
心配いりません。人は全員、いつかちゃんと死ねます。死なない人は一人もいません。死に方に上下はありません。怖くもありません。
笑顔で暮らし、好きなことをしながら、安心してあちらに帰りましょう。
寿命が来れば肉体は朽ちる、という意味で『人は死ぬ』が、霊魂は生き続ける、という意味で『人は死なない』。私は、そのように考えています」と、いわれます。
長生きすることが、まるで美徳のようにメディアは取り上げますが、長生きは単なる結果であり、人生の目的ではありません。私たちは生きる時間の長さを競うために生まれてきたわけではありません。
寿命や余命は人それぞれであり、比較してもしかたないものです。大切なのは、生きた年月ではなく、いかに生きたかということです。その人が、人生の中で何を体験し、何を学んだのかが最も大切なものなのです。

以前お寺でも講演していただいたバレエ教室、ラ・プリマヴェーラを主宰されている宮下和江先生から、先日こんなお話しをうかがいました。
東日本大震災から少し経った後に、バレエ教室に通う女の子が宮下先生に「先生、私の弟(幼稚園児)が、テレビで東日本大震災のニュースを見ていて、ぼくこの時の津波で流されたんだよ、そしてその時に死んじゃったんだよ、と言うんです」と教えてくれたそうです。もちろん、その弟さんは大震災の後に生まれたので、地震のことも津波のことも全く知らないのに 、津波の映像見たとたんにその時の記憶がよみがえったのだそうです。津波で流され一度死んでしまった魂がこの子の肉体をかりて生まれ変わったということでしょう。
たとえ短い生涯であっても、人生の経験、魂の学びが必要であれば、この子のようにいつでもすぐにこちらの世界に戻ることができるということです。
人は死なないのです。肉体は滅んでも、魂は永遠なのです。




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