ずいけい
まごころに生きる  


お香とは本来、お釈迦さまにお供えするものとして始まったといわれます。
お釈迦さまは、生前から(じん)(こう)(じん)(すい)(こう)(ぼく)ー比重が重く水に(しず)む香木)の(かお)りを好まれたことから、亡くなられたときに、いろいろな(こう)(ぼく)(まき)として積んだ上に(ひつぎ)を置いて火葬されました。
またその後、弟子たちはお釈迦さまをご供養するときに、(じん)(こう)()いて(かお)りをお供えしたといわれます。(仏さまに焼香し香りをお供えすることを供香(そなえこう)といいます)
日本のお香の歴史は仏教の伝来とともに始まります。6世紀、西暦552年頃。(きん)(めい)(てん)(のう)の時代、百済(くだら)(せい)(めい)(おう)より、医・易・暦などが伝来します。この時に、仏像と経典が送られ、お香は、仏教の布教のために、(じん)(こう)などの香木を(しょう)(こう)したと考えられています。
また、日本書紀には次のような記録が残されています。
(すい)()(てん)(のう)3年、西暦595年の4月に、2メートルほどの流木が(あわ)()(しま)に漂着しました。島の人々は、ただの流木と思い、かまどの(まき)として火にくべました。ところが、えもいわれぬかぐわしい香りが立ち上りました。驚いた人々は、この木片を朝廷に献上します。
推古3年の奈良時代は、ちょうど聖徳太子(574ー622)が摂政として政治を行っていました。聖徳太子は、献上された流木を見て、ただちにこの流木は「(じん)(こう)である」と判別したといいます。仏教の普及につとめた聖徳太子が(じん)(こう)を知っていたのも、不思議ではありません。
ところで、日本にある(じん)(こう)の中で、もっとも有名なのは、奈良・東大寺正倉院に伝わる『(らん)(じゃ)(たい)』(正式名称は(おう)(じゅく)(こう))です。長さは1メートル56センチ、重さは11.6キログラムあります。平城京の仏教文化を創り、東大寺を創建した(しょう)()(てん)(のう)(701ー756)が名付け親といわれ、(らん)(じゃ)(たい)には、蘭という字の中に「東」、奢の中に「大」、待の中に「寺」というように「東大寺」という文字が隠されています。この蘭奢待は、聖武天皇の(ほう)(ぎょ)後、(こう)(みょう)(こう)(ごう)(701ー760)により東大寺に献納されたといわれています。
正倉院に素晴らしい香木があるという話は、長い年月を経て世に広がります。歴代の天皇や将軍たちは、この天下一の名木を持つことが最高権力者にとってのステータスとされました。蘭奢待は、光明皇后が東大寺に献納したときには、重さが13キログラムあったとされます。当時より目方が少なくなったのは、歴代の天皇や権力者たちが、手柄のあった者に切り取って与えたためといわれます。
(らん)(じゃ)(たい)には(あし)(かが)(よし)(まさ)(1434ー1490)、()()(のぶ)(なが)(1534ー1582)、明治天皇(1852ー1912)という時の権力者たちが切り取り、その切り取った場所には()(せん)が残されています。
明治天皇はその香りを「よい香りがただよって、(あん)(ぐう)(旅先に設けた(かり)(みや))の室内を満たした」といわれています。
お香は平安時代(784~400年間)に入り、宮中の貴族の間にも香りを教養として楽しむ文化が広がり「(たき)(もの)合わせ」という遊びも行われるようになります。これは各自がオリジナルの配合で()ったお香((ねり)(こう))の香りの優劣を競うもので『源氏物語』にも登場しています。 
その後、鎌倉時代になり武士が台頭すると、(たき)(もの)から香木の香りをじっくり楽しむ文化へと変わっていきます。
そして、室町時代の東山文化の時代には香木を楽しむための作法や道具が調えられ、香りを「聞く」香道が成立しました。



最新記事へ



●令和7年1月号 霊性に根ざした生き方
●令和6年10月号 お香
●令和6年8月号 瑩山禅師700回 大遠忌法要修行
●令和6年5月号 日本の成り立ち
●令和6年3月号 生命の不思議
●令和6年1月号 生命とは動的平衡
●令和5年10月号 色即是空空即是色
●令和5年8月号 森の木は会話する
●令和5年5月号 教育勅語
●令和5年3月号 龍村仁監督と佐藤初女さん
●令和5年1月号 中宮寺 如意輪観音
●令和4年10月号 人は死なない
●令和4年8月号 バッチ博士のフラワーレメディ
●令和4年5月号 縄文文化-縄文土器-
●令和4年3月号 イマジン
●令和4年1月号 日本のなりたち
●令和3年10月号 ありがとう
●令和3年8月号 「而今」ー今ここー
●令和3年5月号 シュリハンドクとレレレのおじさん
●令和3年3月号 コロナウイルスとこれからの日本
●令和3年1月号 三密とコロナ
●令和2年10月号 日月神示が告げるコロナとミロクの世界
●令和2年8月号 祈祷-命の危機の時代に-
●令和2年5月号 色即是空-色はすなわち是れ空なり-
●令和2年3月号 お彼岸-内海聡先生講演会-
●令和2年1月号 お水の時代
●令和元年10月号 生まれる前のおはなし
●令和元年8月号 祈りと量子力学
●令和元年5月号 一休禅師とシャーリー・マクレーン
●平成31年3月号 『浴司』よくす
●平成31年1月号 夢と意識
●平成30年10月号 『而今』にこん
●平成30年8月号 懐奘さまのまごころ 孝順心
●平成30年5月号 唯仏与仏
●平成30年3月号 彗星探索家 木内鶴彦さん
●平成30年1月号 金子みすゞの世界
●平成29年10月号 お地蔵さま
●平成29年8月号 お盆
●平成29年5月号 諸法実相-ただ仏と仏とのみ-
●平成29年3月号 即心是仏
●平成29年1月号 はじまりはひとつ
●平成28年10月号 ホセ・ムヒカの生き方と言葉
●平成28年8月号 1/4の奇跡
●平成28年6月号 いのちをむすぶ ー佐藤初女さん
●平成28年3月号 般若心経
●平成28年1月号 生きがい
●平成27年10月号 死後の世界(その二)
●平成27年8月号 死後の世界
●平成27年5月号 ダライ・ラマ十四世法王
●平成27年3月号 正倉院ーシルクロードの終着駅ー
●平成27年1月号 三帰礼文ー三宝を敬うお唱えー
●平成26年10月号 「般若心経」色即是空・空即是色
●平成26年8月号  ハス
●平成26年5月号 観音さま
●平成26年3月号 無情説法
●平成26年1月号 石田徹也
●平成25年10月号 食 じき
●平成25年8月号 GOMA
●平成25年5月号 宮沢賢治ー菩薩の道を行くー
●平成25年3月号 東日本大震災 三回忌追悼
●平成25年1月号 新年あけましておめでとうございます
●平成24年10月号 宇宙の始まり
●平成24年8月号 ふくしま
●平成24年5月号 花まつり
●平成24年3月号 画餅 -絵に描いた餅-
●平成24年1月号 いま・ここを大切に生きる
●平成23年10月号 大自然から学ぶ
●平成23年8月号 暑中お見舞い申し上げます
●平成23年5月号 花まつりーお釈迦さまの誕生日
●平成23年3月号 「奇跡のリンゴ」
●平成23年1月号 「すべてはこころ」
●平成22年8月号 自発的治癒力
●平成22年8月号 地蔵盆
●平成22年8月号 奇跡のリンゴ
●平成22年5月号 お水取り
●平成22年3月号 仏さまに救われて
●平成22年2月号 号外 真如の表紙
●平成22年1月号 新年のごあいさつ
●平成21年10月号 浄国寺御開山
●平成21年5月号 花まつり
●平成21年3月号 お彼岸
●平成21年3月号 チェンジ-変革
●平成20年10月号 あいさつ
●平成20年8月号 天来の呼び声
●平成19年8月号 釈迦八相
●平成19年5月号 花まつりーお釈迦さまの誕生日
●平成17年10月号 イサム・ノグチとモエレ沼公園

Copyright (C) 2009 joukoku-ji.jp. All Rights Reserved.