ずいけい
まごころに生きる  


龍村仁(たつむらじん)監督のドキュメンタリー映画「地球交響曲(ちきゆうこうきようきよく)第7番」が完成し、見せていただきました。
この映画に出演されている医師、アンドルー・ワイル博士は、世界各地の伝統医療と西洋近代医学を統合した「統合医療(とうごういりよう)」の世界的第一人者です。博士は、医学部時代、西洋近代医学の限界を痛感し、伝統治療の叡智を求めて、アマゾン奥地をはじめ、世界各地を旅し、薬草やシャーマニズムを実地調査されます。
そして、自らの力で病気を癒し健康を取り戻す力『自発的治癒力』に注目され、現代の西洋医学と昔から世界各地に伝わる伝統医療を合わせた、「統合医療」を提唱され、今では全米各地に統合医学プログラムをおこなう機関がうまれているといいます。
博士は、現代医学と自発的治癒力の関係をこう説明されます。
「ある人が重症の細菌性肺炎にかかったとします。病院に行き、抗生物質の注射を受けました。そして24時間後に危機的状況を脱します。すると、誰もが『抗生物質が肺炎を治したと』考えてしまいます。
でも、本当は次のように理解すべきなのです。
病原菌の数が圧倒的に多い時には、自分の免疫力が十分に働くことができません。そこで、抗生物質が病原菌の数をあるレベルまで減らします。すると免疫力、すなわち自発的治癒力が活性化し、最終的に病気を治すのです。病気を治すのは、薬そのものではありません。
薬は、自発的治癒力が活性化するのを助けるもの。誰もが持っているこの治癒力は、いつも体の中にあり、活性化する時を待っているのです。」
 
そしてさらに、『こころ』特に『思考』が病気の治療にとって、とても大切であることについて、アンドール博士はこういわれます。
「仏教の教えでも、思考の耽溺(たんでき)(おぼれること)は悟りへの最大の(さまた)げと考えられていますが、医療でも思考は治療の妨げになると考えられます。つまり、思考はわれわれを『いま、ここ』から、過去へ、未来へ、幻想へと非現実の領域へと連れ出してしまいます。思考は日常生活においても不安・罪悪感・恐れ・悲しみなど治療の妨げとなり、苦悩の原因となる、感情の源泉なのです。
ところで、瞑想(めいそう)はこの思考への耽溺(たんでき)を打ち破る一つの技法です。呼吸・身体感覚・視覚イメージを集中させ、それを維持していくことが大切です。そして、瞑想の真の目標はたえずそれを行うところにあります。思考という終わりのない魅惑的なプロセスによって、こころが『いま、ここ』から離れていることに気づいたときは、いつでも注意をからだに、呼吸に向ける習慣をつけていただきたいものです。」

アンドルー博士の、この思考と瞑想についての考え方には非常に興味を引かれます。それは、道元禅師さまの説かれた「坐禅(ざぜん)」と全く同じだからです。道元さまの坐禅は、姿勢を真っ直ぐにし、呼吸を整え、思考を追わないということです。つまり、博士のいわれる『いま、ここ』を体現するのが坐禅であるのです。道元禅師さまは、これを「而今(にこん)」(ただ、いま)といわれ、時間と空間が一つになったすがたであると説かれています。 

アンドルー博士は、この他にも食生活、治癒力を高めるくすり、有害物質から身を守る方法、こころと霊性(れいしよう)のはたらきなど、さまざまな視点から自発的治癒力について研究され、ご自身も実践されています。

さて、私自身もそうですが、病気になるとすぐに病院へ行って、たくさん薬を処方されると、つい安心してしまうということがあります。病気は病院で治していただくもの、と完全にお医者さまや薬に頼ってしまっています。しかし、よく考えてみるとアンドルー博士もいわれるように、最終的に病気を治すのは自分自身の治癒力なのです。ですから、まずは自分自身を信頼すること、自分自身の自発的治癒力を信じることが何より大切なのではないでしょうか。私自身への反省を含めて、本当にそう思います。


◇アンドルー・ワイル◇
医学博士。ハーバード大学医学校卒。国際情勢研究所の研究員として北米・南米・アジア・アフリカなどの伝統医学やシャーマニズムのフィールドワークを行う。その実践的研究から、代替医学・薬用植物・変性意識・治癒論の第一人者となる。
著書に「人はなぜ治るのか」(日本教文社)「癒す心、治す力」「心身自在」「ワイル博士の医食同源」(角川書店)など多数。『タイム』誌の「最も影響力をもつ二十五人の米国人」の一人に選ばれる。映画「地球交響曲第7番」に出演。


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