ずいけい
まごころに生きる  


お釈迦さまの前世の物語「ジャータカ」には、お釈迦さまがブッダとなられる前に何生(なんしよう)もの間、菩薩として善行を積まれたお話しが収められています。
この中に、手塚治虫の「ブッダ」にも登場する、ウサギのお話しがあります。このウサギは、お釈迦さまがまだ菩薩として修行していた、前生(ぜんしよう)の時の姿とされています。

むかし、深い森に一匹のウサギがすんでいました。ウサギには、カワウソとキツネとサルの友だちがいました。ウサギはいつもみんなにこういっていました。
「困っている人がいたら助けてあげなくてはいけない。食べ物がほしいという人には、自分の食べ物を分けてあげよう」
ある日のこと、一人の旅の僧がやってきました。よろよろとして、ひどく弱っているようです。心配して四匹の動物たちはかけよりました。
「どうしましたか」
「わたしは、もう何日も食べていないのです。なにか食べ物を施してくれませんか」
四匹は、急いで食べ物をとりにでかけました。
カワウソは、しまっておいた魚を持ってきました。
「さあ、これを食べてください。おいしいお魚です」
キツネは、とっておきの肉を持ってきました。
「召しあがれ、元気がでます」
サルは、木の上のマンゴーの実をとってきました。
「さあ、甘くておいしい果物を食べてください」
一方、ウサギは季節がら自分の食べ物さえなく困っている時でした。必死にあちこち食べ物をさがすのですが、どうしても見つかりません。途方に暮れてもどってきたウサギは旅の僧にいいました。
「お願いがあります。どうか薪を集めて火をおこしてください」
いわれるままに、旅の僧は火をおこしました。するとウサギは、
「わたしにはあなたにさし上げる食べ物はなにもありません。どうか、焼けたわたしの体を食べてください!」
そういって、真っ赤な火の中に飛びこんだのです。
ところが、ふしぎなことに火は少しも熱くありません。その時です、旅の僧はみるみるうちに、帝釈天(たいしやくてん)(仏教の守護神)の姿となりました。
「ウサギよ。わたしはおまえが日ごろいっている施しの心が本当かどうか試していたのだ。だが、おまえの気持ちに偽りはなかった。そのやさしい心と行いが世界に広まるように、月におまえの姿を(しる)そう」
帝釈天は、そういって天界に帰っていきました。
その夜、四匹の動物たちは山の上に集まりました。
「ウサギさん。お月さまの中にあなたとよく似たウサギがいるよ」
「あれはね、わたしの心が映っているんだ。この心が真実ならば、お月さまは明るく輝き、わたしが悪い心をおこしたならば暗くなるんだ」
みんなは、笑っていいました。
「今夜のお月さまはとっても明るいね」

 
先日、北星学園大学で行われた、飯田史彦(いいだふみひこ)さんの講演会に行ってきました。飯田史彦さんは、経営心理学者、カウンセラー、音楽療法家で、京都に無償でカウンセリングを行う「光の学校」を設立し、社会奉仕活動をされています。
飯田史彦さんは、福島大学の教授であった、43歳の時に臨死体験されます。2005年12月28日に脳溢血で倒れ救急搬送された時のことです。そこで脳に100ccの大量出血が発見され、緊急手術を受けられます。
「ふと気が付くと、私は、自分の体を見下ろしていました。同時に家族や友人、そしてあらゆる存在とつながっていることに気づき、深い感謝の念がわいてきました。次の瞬間、私は、自分が光になって、どんどんまぶしく輝いていくのを感じ、気がつくと、この物質世界とはまったく違う、どこか別の世界へと移動していました」
その世界は、おだやかで崇高な美しさに満ちた、究極の光だったといいます。そして飯田史彦さんはその光と、会話をしたのだそうです。
飯「あなたは…?」
光「あなたの仲間…同士です」
飯「人として人生を生きると はどういうことなのでしょうか?」
光「人生とは、自分の成長のために、自分なりの学びを積むことです。それが、世の中のために生きることにつながるのです。そして魂は、何度もこの光の世界から物質世界へと生まれ変わっていくのです」
飯「学びと成長のために?」
光「そうです。さまざまな肉体を取り替えながら、異なる人生を経験し魂は成長するのです」
飯「すべての死には意味があるのですか?」
光「死には、そのすべてに、貴重な意味があります」
飯「ありがとうございました」 
この不思議な死後の世界を体験している間に、手術は無事成功し、飯田史彦さんは、またこの世界に戻られました。彼がこの臨死体験でわかったことは、「人間の本質は、肉体を越えて存在する魂であるということです」といわれます。人は肉体的死を体験すると、魂として自分の体から離れ、下に横たわる自分の身体を見て、次元の境界を通りぬけ、「究極の光」という、物質を持たない意識だけの世界に移動するのだということです。そして、魂は、その光の世界とこの世を何度も行き来します。
人には、生まれてこなければ経験できない貴重な学びの機会があるからこそ生まれてくるのであり、人生には「病気」や「人間関係」や「老い」や「死」という苦しみもあります。その「思い通りにならないこと」を通じて学ぶことこそが、人間として生きる目的や意義や意味なのだということです。





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