ずいけい
まごころに生きる  


大本山永平寺には、白山系からの(ふく)(りゅう)(すい)(はく)(さん)(すい)』が()き出ています。白山は、山頂に白山神社が祀られる北陸の霊山です。年が明け元旦には、この白山水の(わか)(みず)を汲み、ご開山(どう)(げん)(ぜん)()さまにお茶を()てお供えいたします。
 
禅の世界では、茶道でも茶室への道にお清めの水を()く打ち水をして、迎え入れるお客様へのおもてなしの心をあらわしました。
また、神道でも、聖域を訪れる際に周辺に流れる河川の水や湧き水をお清めの水とし、心と身を清めてきました。
日本人は古くから水源地や川をつかさどる神々を信仰しお水を(あが)め大切にしてきました。
 
今から38億年前、最初の生命は水の中で誕生しました。原始地球の物質が極限の中の環境で反応し、アミノ酸ができました。アミノ酸が結合してタンパク質が生成されました。タンパク質から生命の()(がた)である(かく)(さん)ができ、(げん)(かく)(せい)(ぶつ)(単細胞生物)が誕生しました。生命体の基本材料ができたこの時代を、生命の化学進化の時代といい、6億年ほど続きました。
生命体は誕生して以来、30億年間もの間、水中で生命活動を続けて、やがて両生類から()(ちゅう)(るい)を経て(せき)(つい)()(にゅう)(るい)動物へと進化していきました。まさに、水は命の源ということになります。 

では、お水はこの宇宙ではどのようにして誕生したのでしょうか。宇宙は今から137億年前に、ビッグバンによって始まったといわれます。そして、ビッグバンから38万年後に最初の物質である、水素原子(H)が誕生します。原子番号1番、陽子(H⁺)と電子(e⁻)が対になってできた「水素原子(これをプロトンといいます)」は、宇宙で最初にできた物質です。 産業革命のころ、この物質は「水素」と呼ばれるようになりました。ギリシャ語の Hydro(水)と Genno(つくる)を合わせてHydrogen(水の素)と名付けられた「水素原子(プロトン)」は、あらゆる物質の生みの親であり、あらゆる生命の源である「水」の素でもあります。その水素原子から、次々とヘリウム、リチウム、ベリリウムなどの基本元素が生成され、第8番目に(さん)()原子(O)が誕生しました。そして、その32万年後に、(ちょう)(しん)(せい)(ばく)(はつ)(質量の大きな(こう)(せい)が一生を終え爆発すること)のエネルギーにより水素原子と酸素原子が衝突して水(H2O)が生まれたのです。
さて、宇宙に太陽系が生まれたのが今から46億年前です。それは、超新星爆発で放出された、大量の微粒子が集まり(せい)(うん)となり、爆発の衝撃波で回転と収縮が進みます。そして、中心部では大量のガスが高密度・高温化し、ヘリウムが核融合反応を起こし原始太陽が輝きだしました。同時にその周りに、微粒子の(かたまり)である()(わく)(せい)を形成します。この微惑星と水素などの軽いガスを集めて誕生したのが太陽の周りを回る(わく)(せい)です。地球は、こうして太陽の第3惑星として生まれました。やがて地球は、火山の噴火や隕石の落下などの活動がおさまり、溶岩が溶け込んだ高熱の海も次第に冷えていきました。地球の上空にあった大量の蒸気も、雲となり雨が地表に降りはじめます。雨はやがて豪雨となり、何億年も降り続いたといわれています。原始の地球は、火と水が溶けあったドロドロの灼熱の海(マグマオーシャン)でした。それが、水が火の怒りを飲み込み鎮め、やがて静かな海に変わっていきました。(しょう)(ねつ)()(ごく)の地球が、水によって(ちん)(こん)され、現在の地球のすがたになったのです。

奈良県吉野郡天川村に(てん)(かわ)(べん)(ざい)(てん)(しゃ)という神社があります。ご神体は水の神様といわれる(べん)(ざい)(てん)です。この境内の(ゆう)(すい)は、古来、薬水として信仰されてきました。天河神社の由緒を書いた文献には、()(じん)(ぽう)である五十鈴(いすず)(三個の鈴で二等辺三角形をなしている)は、物質の三元素である中性子・陽子・電子をあらわしているといいます。また、文献によると三個の鈴は、ご神体の釈迦・()(おう)(ごん)(げん)・弁財天をあらわし、中性子(釈迦)と陽子(蔵王権現)が一つになって水素原子になったのが弁財天で、水の神様とされています。弁財天は、水のエネルギーのプロトン(水素原子)と電子(e)の象徴ということになります。
天河神社の(かき)(さか)()()()(すけ)宮司は、「神道とは宗教ではなく、『(もと)の教え』つまり真理のことです。それが科学ともつながっているのは当然です」といわれます。宇宙とともに生まれた「水」を人が汚すということは、いかに恐れ多いことでしょうか。柿坂宮司はいわれます、「これまでは、物質中心の欲望の時代でした。物欲はあらゆる煩悩に火をつけ、もめごとや争いの火種になりました。水は煩悩の火を消し、戦火をおさめ、鎮魂のしるしといわれてきました。現代は転換期にたっています。これからの時代は水の時代としなければなりません」



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