ずいけい
まごころに生きる  


―生き方は星空が教えてくれる―
レンズの直径15センチ、倍率が25倍、重さ30キロの大型双眼鏡でこれまでに4つの(すい)(せい)を発見した()(うち)(つる)(ひこ)さんは、世界的に有名なコメット・ハンターです。航空自衛隊の在職中22歳の時に、上腸間膜動脈性十二指腸閉塞で死線をさまよったことがきっかけとなって、幼いころから興味があった天空を彩る星の世界に引きこまれていきました。
木内さんが発見した彗星は4つ。そのうちの2つは「KIUCHI」と、木内さんの名前が彗星の名前の中に入っています。木内さんが発見した彗星のうちで一番有名なのは、1992年に再発見したスウィフト・タットル彗星です。この彗星は第一回目に発見されたのが1862年で、120年周期で現れると推定されていて、次は1982年にやってくるはずだと世界中の天文台が探していました。木内さんは独自の計算方法で範囲を特定し毎日観測をつづけ、ついに130年ぶりにこの彗星を見つけることに成功しました。これは世界の天文学界に衝撃を与える大発見でした。
木内さんをこのような大発見するほどの天文観測家にしたのは、実は、(りん)()(たい)(けん)だったといいます。臨死体験によって、木内さんはこの宇宙とは何なのか、時間と空間とは何なのか、自分とは何なのかということを考えつめるようになり、それが天文観測に向かわせることになったのだといいます。
臨死体験をしたのは1976年、22歳の時でした。そのころ木内さんは航空自衛隊の茨城県百里基地で航空管制の仕事をしていました。ある日突然任務中に、今まで経験したことのない腹部の激痛により意識をなくし、救急搬送されます。木内さんは一晩で体重が30キロも減る脱水症状をおこし、臓器という臓器がみんなおかしくなり、医師の目から見ても、生きているのが不思議という状態でした。
その状態が十日間あまりもつづき木内さん自身も、もうおしまいかと思っているところに、造影剤を入れてレントゲン検査が行われました。弱り切った体には、ひどくこたえて、検査が終わったとたんに気が遠くなります。
ここから木内さんの臨死体験がはじまります。
「気がつくと真っ暗なんです。意識ははっきりあるのに何も見えない。その真っ暗な中を這いずりまわっていました。すると、遠くの方に小さな明かりがポツンと見えたので、そこを目指して這っていきました。そのうちその辺がだんだん明るくなってきて、ふと振り返ってみると、いままで這ってきたところが、トンネルのように見えました。そして、歩いていくと川がありました。かなり広い川です。川岸に船があって、向こう岸に行こうと思い船に乗り込み、必死の思いでこぎました。オールも何もないので手でこいだんです。やっとの思いで向こう岸に着くと喪服を着たおばさんが来て、たき火まで案内してくれました。そのたき火には、死んだおじいさんと若くして死んだいとこと他に何人かいました。しばらくたき火のところで話をしたあと、おばさんが、いいところへ連れて行ってくれるというので、そのあとについて歩き出します。そこは、ゆるやかな丘で、地平線が無限に広がっていて、すごく明るいところでした。一面に花が咲いていました。そして、心地よい風が吹いていてとても気持ちがいいのです。」
しかし、体験はここで突然終わり、いきなりポンと病室のベッドの上で寝ている自分にもどります。ベッドの脇には両親がいました。木内さんは『いまのは、夢だったのかな、それとも人が死ぬ前に見るという風景なのかな』と思います。そして、看護婦さんを呼ぼうと思って、ナースコールのボタンを押そうとした瞬間意識を失います。
「ボタンを押そうとした瞬間、自分の心臓が止まるのと呼吸が止まるのがわかったんです。息が吸えない。吸おうとするけど吸えない。それからこめかみのドキドキがなくなりました。しかし僕の意識は変わりなくつづいていました。そして、その意識が体から抜け出していくんです。その体をおふくろはゆさぶって騒いでいる。『おれはここにいるよ』とおふくろにいうんですが、全然わかってくれない。それで、ハッとして、『おれは死んでるのかな』と思いました。」
木内さんは、理科系の勉強をしてきたので、それまで死後の世界があるとは思っていませんでした。しかし、いま自分自身が体験しているこの世界が死後の世界であるとしたら、とても面白いと思いました。そして、もしかしたら、時間を乗りこえることもできるかもしれないと考えます。木内さんには、行ってみたい過去がありました。
それは六歳の夏に起きたある不思議なできごとでした。その日、お兄さんやお姉さんといっしょに、家の近くの千曲川に遊びに行きました。河原に降りて行くには、大きな石がゴロゴロしている斜面を降りていかなくてはなりませんでした。と、突然、『危ない!』という声が聞こえます。パッと目を上げると、お姉さんの上の石がゆるんで、大きな石がお姉さんのところに転げ落ちてきたので、思わず後ろから突きとばしました。お姉さんは転びましたが、無事助かります。『あの声は、いったいどこから聞こえたのか?』
もし時間を乗りこえられるものなら戻ってみたいと思ったのは、その場面でした。
「そうしたらそう思っただけで、その場面に戻れました。不思議に思うでしょうが、実際戻っていました。そして、その場面を見ているうちに、例の石が見えて、姉の上に落ちそうになった、そのとき『危ない!』と自分でいってしまったんです。そしたら、そこにいた小さいときの自分がこっちをパッと振り返ったんです」
つまり、『危ない!』といったのは、未来の大きくなってからの自分だったというのです。その後、木内さんは未来の世界も見ることになります。
「私は22歳の臨死体験で、未来の自分自身を見ることができました。40歳になったとき、高野山で開かれた会議で講演している私の姿が、まさに臨死体験で見た私の未来像とぴったり一致したからです。(高野山の体験については、当会報144号で紹介しています)
しかしもう一つ見た二重写しの不思議な未来像はまだ実現していません。それは、老人になった私が子供たちの前で星について話している平和な未来と、もう一つは(はい)(きよ)の中を私が(ぼう)(ぜん)と歩く不吉な未来です。なぜ二重に見えたのかというと、私はこの未来にはまだ選択の余地があるからだと考えています。人間が使命を自覚し、地球環境を守るため行動すれば、平和な世界はまだつづくでしょう。でも暴走が止まらず、損得だけを追求する強欲な暮らしを続けていくならば、最悪の状態を迎える日も近いのかもしれません。それを選択できるのは私たち自身だと思うのです。」

木内さんは、()()な「臨死体験」を何度もしていて、この特殊な経験と星空からの学びから、私たちにとって大切なことは何なのかを、全国での公演会や勉強会を通して伝えておられます。



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