ずいけい
まごころに生きる  


禅の教えを表す代表的なことばの一つとして「即心是仏」があります。「この心こそが、仏である」という意味です。
永平寺を開かれた、宗祖道元(どうげん)さまは著書「正法眼蔵(しようぼうげんぞう)」の『即心是仏(そくしんぜぶつ)』の巻に、「一切法(いつさいほう)一心(いつしん)なり」と説かれました。一切法とは、この世に存在するすべてのものという意味です。一心は、一つの心という意味で、この世のすべては一つの心であるというのです。
そして、その心とは、もちろん仏さまの心を指すのです。仏さまの心とは、慈悲(じひ)の心です。すべてのものを、(いつく)しみ、思いやる、あたたかなまごころのことをいうのです。
まごころといえば、いつも思い出すことがあります。
私が、小学校に入ったころから、祖父と父と私と三人で、毎朝本堂で朝の勤行(ごんぎよう)を続けておりました。私は、毎朝父に起こされ、眠い目を擦りながら本堂に向かいます。当寺、祖父が住職をしておりましたので、本堂の真ん中に座り、導師(どうし)を務めます。父は、(かね)木魚(もくぎよ)()き勤行を(すす)めます。そして、私は本堂正面の香炉(こうろ)にお線香をお供えするという役目でした。
禅宗では、香炉にお線香を真っ直ぐに立てお供えいたします。ところが、子どもなのでなかなかうまく真っ直ぐにならず、お線香が右へ左へと傾きます。そうすると、真ん中に座って見ている祖父が「()がっているぞ!」と、(おこ)るのです。祖父の一括(いつかつ)で、私は「はいっ!」と、いってお線香を直してきます。毎朝、怒られながら、朝の勤行を続けてきたあの時の記憶が、今でも鮮明によみがえってきます。
さて、祖父が亡くなり、父も亡くなり、私が住職となり、本堂の真ん中に座り、お線香をお供えするようになって、初めてお線香を真っ直ぐにお供えする意味が分かった気がいたします。それは、お線香を真っ直ぐに立てるということは、立てた自分自身と、立てたお線香と、正面にお祀りし礼拝している、ご本尊さまが一直線になるということです。この三つが、真っ直ぐに(とお)るということです。
そして、この三つが真っ直ぐに通ったときに、初めて仏さまをご供養申し上げる、こちらの心が、仏さまに伝わり、さらには、仏さまの慈しみの光でこちらがつつまれる世界が現れるということに気づかされました。
ですから今考えてみますと、あの時怒られ続けてきたということは、「お前には仏さまをご供養申し上げる、まごころが欠けているから、お線香がいい加減になって、右へ行ったり左へ行ったり曲がってしまうのだ」と、いわれ続けてきたような気がいたします。
いま、あの時のことを反省して、お線香、ロウソクを真っ直ぐにお供えする。あるいは、ものごとをいつも丁寧に親切に、思いやりをもって(あつか)っていくということに気をつかっています。
昨年は祖父の三十三回忌を終え、今年は父の二十七回忌を迎えます。
言葉では理解できないであろう、まだ幼い私に、仏さまの教え、まごころの大切さを、お線香をお供えするという行いをもって、くり返し説いていただきました。
父である先代住職、祖父である先々代住職の親切心に感謝し、毎朝報恩(ほうおん)の読経を続けています。




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