ずいけい
まごころに生きる  


昨年の十一月に、ドキュメンタリー映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第3番』の上映会と立教大学名誉教授の(にごり)(かわ)(たか)()先生の講演会を開催いたしました。そのご講演のお話を、ご著書からの抜粋でご紹介いたします。

僕が敬愛して止まない人物、僕が心底尊敬する人、それが映画監督の(たつ)(むら)(じん)です。その龍村監督が2023年1月天に召されました。胸の中にぽっかりと大きな穴があいたようです。どんな状況でもブレない監督の姿勢は、いつも同じ北の空に輝く北極星のような存在でした。僕にとっては大切な羅針盤でした。
その(たつ)(むら)(じん)が世に送り出した映画が『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』です。イギリスの生物物理学者ジェームズ・ラブロックの唱えるガイア理論、すなわち地球は一つの生命体であるとする考え方をベースに、龍村監督によって制作された一連のドキュメンタリー映画です。美しい映像と音楽、(しゅ)(ぎょく)のことばの数々によって織りなされるこの作品は、環境問題や人間の精神性に深い関心を寄せる人たちのバイブル的存在になっています。1992年の初上映以来、2021年公開の最新作『第9番』までで、ほぼ草の根の自主上映で、実に250万人を超える観客動員がありました。
10年以上前になりますが、そんな龍村監督に僕はどうしても聞いてみたいことがあり、立教大学に監督をお招きしシンポジウムを開催することにしました。僕が監督に聞いてみたかったことは、未曾有の被害をもたらした3・11、つまり2011年の東日本大震災には一体どんな意味があったのか・・・という疑問です。スピリチュアルな思想に深く共鳴していた当時の僕は、「すべての出来事には大切な意味がある」と考えていました。では、世界中を(しん)(かん)させたこの世紀の大震災に、一体どんな意味を見出せと言うのか・・・いくら考えてもモヤモヤとして答えが出せない僕でした。映画『地球交響曲』はそれ以前から僕の思想に大きな影響を与えていたのですが、一連の映画を通じスピリチュアルなメッセージを発信し続ける龍村監督なら、その答えを持っているのではないか。そう考えたのです。そこで、公共の場でそれを語っていただこうと、思い至ったのでした。その答えは確かにありました。龍村監督と同席した東京大学の()(はぎ)(なお)()教授、さらに僕を加えた3人で導いた答えは次の通りです。
 
3・11は、ガイア(地球)が発した人々へのメッセージだった。そのメッセージとは、「古の日本人、すなわち縄文人たちが持っていた(れい)(せい)を思い出せ」というもの。なぜ日本で起きたのか。それは、日本が選ばれたと言うこと。東北地方は、選ばれたということです。なぜ選ばれたのか。答えは、それを乗り越える力があったから。このガイアが発したメッセージでもある未曾有の(さん)()を、日本人なら乗り越えることができる。勇気と(にん)(たい)(えい)()を併せ持つ東北人なら、ガイアからのメッセージを正しく受け止め、これを乗り越えることができる。だから選ばれたのです。では、ガイアのメッセージである縄文人の(れい)(せい)とは何か。それは、他者を思いやる心。自然への()(けい)を心に宿し、これと調和して生きる心。もともと持っていたこの心を思い出せ!とガイアが伝えている。

というのが、僕らが導き出した疑問に対する答えでした。
また、龍村監督は、映画の中でこう話されています。
「かつて人が、花や樹や鳥たちと本当に話ができた時代がありました。その頃、人は自分たちの命が、宇宙の大きな命の一部であることを誰もが知っていました。太陽を(うやま)い、月を(あが)め、風に(たず)ね、火に(いの)り、水に()やされ、土と共に笑うことが本当に生き生きとできたのです。ところが最近の科学技術のめまぐるしい進歩とともに、人はいつの間にか『自分が地球の主人であり、自然は自分たちのために利用するもの』と考えるようになってきました。その頃から人は、花や樹や鳥たちと話す言葉を急速に忘れ始めたのです。人はこのまま自然と語り合う言葉を、永遠に忘れてしまうのでしょうか。それとも科学の進歩と調和しながら、もう一度、その言葉を思い出すことができるのでしょうか。」
現代は物質文明が発達しました。ものが(あふ)れている中、ともすると私たちは形あるもの、見えるものに価値をおいてきました。しかしこれからは(れい)(せい)に根ざした生き方、つまり人知を越えた大いなる存在を認識し、それに対し畏敬の念を抱くことなど、かつての日本人が大切にしてきた、目には見えないものを大切にしていく生き方が求められているのです。
 「日本の約束」より


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